相見積もりのマナー|例文3本と同条件チェック
結論:相見積もりは「2〜3社・同条件・結果連絡」が基本マナー
相見積もり(あいみつ:複数社から同時に見積を取ること)は、イベント発注では一般的な進め方です。ただしマナーを外すと協力会社との信頼関係を損ない、良い提案が集まらなくなります。基本は次の5つです。
- 社数は2〜3社が目安。多すぎると1社あたりの提案の本気度が下がり、比較の手間も破綻する
- 相見積もりであることを最初に伝えるのが誠実な依頼
- 全社に同じ条件・同じ資料・同じ期限を渡す(条件が違う見積は比較できない)
- 他社の金額を漏らして値引きの道具にしない
- 選ばなかった会社にも必ず結果を連絡する
相見積もりとは:概算と正式の2種類がある
相見積もり(あいみつ)とは、同じ依頼内容について複数の会社から見積を取り、比較して発注先を決めることです。1社だけに見積を頼む「単独見積」に対する言葉で、法人間の取引では一般的な商慣行として定着しています。
依頼の段階によって2種類に分かれます。
| 種類 | 依頼するタイミング | 精度と使いどころ |
|---|---|---|
| 概算見積もり | 企画・予算取りの段階 | 条件が固まりきっていない段階のざっくりした金額。社内の予算申請や、候補を絞り込むために使う |
| 正式見積もり | 仕様が固まった段階 | 費目・数量・単価まで確定した金額。発注の根拠になり、契約書や請書につながる |
候補が4社以上あるときは、まず概算で2〜3社に絞り、正式見積はその2〜3社にだけ依頼するのが双方にとって負担が少ない進め方です。最初から全社に正式見積を求めると、相手の作業量が跳ね上がり、辞退や精度の低下を招きます。
相見積もりは失礼なのか:取ってよい場合とNGな場合
「相見積もりは失礼ではないか」と気にする発注担当者は多いのですが、適切に進める限り失礼にはあたりません。むしろ、社内に対して発注の妥当性を説明する責任がある以上、取らないことのほうが問題になる場面もあります。
| 発注側のメリット | 発注側のデメリット | |
|---|---|---|
| 相見積もりを取る | 相場が分かる/提案の幅が広がる/社内の説明根拠になる/1社依存を避けられる | 手間と時間がかかる/条件を揃える難度が上がる/進め方を誤ると信頼を損なう |
失礼になるかどうかは、社数でも金額でもなく進め方で決まります。
取ってよい(失礼にならない)場合
- 相見積もりであることを最初に伝えている
- 全社に同じ条件・同じ資料・同じ期限を渡している
- 発注先が決まっていない段階で、本当に比較する意思がある
- 選ばなかった会社にも結果を連絡している
避けるべき(失礼になる)場合
- 本命が決まっているのに、形式を整えるためだけに見積を取らせる(当て馬)
- 相見積もりであることを隠して依頼する
- 他社の金額を伝えて値引きを迫る
- 結果を連絡せず放置する
社数の目安:2〜3社が基本の理由
| 案件の性質 | 社数の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 実績のある定例案件 | 2社 | 相場観があり、妥当性の確認が目的 |
| 一般的な新規案件 | 2〜3社 | 提案の幅と比較の手間のバランス |
| 大型・初めての領域 | 3社程度 | 相場観がなく、提案の幅が必要 |
5社・6社と増やしても良いことはほとんどありません。見積の作成は協力会社にとって無償の労働であり、「10社に声をかけている」とわかった時点で、優良な会社ほど辞退するか、簡易な概算しか出さなくなります。真剣に比較検討できる社数に絞ることが、結果的に提案の質を上げます。
依頼時のマナー:伝えるべきことと進め方
依頼時に伝えるべき情報は次のとおりです。
- 相見積もりであることと、およその社数(例:「3社にお願いしています」)
- 選定基準(金額だけでなく提案内容・体制も見る、など)
- 回答期限と結果連絡の予定日
- イベント概要・依頼範囲・数量条件などの基本情報(全社共通)
重要なのは「全社同条件」です。A社には図面を渡してB社には渡さない、C社だけ期限が短い、といった差があると、届いた見積は比較不能になります。1社から質問が来て、その回答で条件が変わる場合は全社に共有します。依頼メールの具体的な書き方は、見積依頼メールの書き方と例文3種に相見積もり用の例文を用意しています。
スケジュールの目安は「回答期限まで1〜2週間、受領後の比較検討に1週間、結果連絡は選定から数日以内」です。イベントの開催日から逆算し、発注確定が遅れると会場や機材の押さえが間に合わなくなるため、相見積もりの期間はあらかじめ全体スケジュールに組み込んでおきましょう。
依頼メールの例文(相見積もり用)
相見積もりであることを最初に伝える一文が入っているかどうかで、以降の進めやすさが変わります。そのまま差し替えて使えます。
件名:〔◯◯イベント〕お見積のご依頼(〔◯月◯日〕までにご回答のお願い)
〔◯◯株式会社〕
〔◯◯〕様
お世話になっております。〔株式会社◯◯〕の〔◯◯〕です。
〔◯年◯月◯日〕に開催予定の〔◯◯イベント〕につきまして、
お見積をお願いしたくご連絡いたしました。
なお、本件は〔3〕社にお見積をお願いしております。
金額のみではなく、ご提案内容と当日の体制も含めて検討いたします。
■ 依頼内容
・開催日時:〔◯年◯月◯日(◯)◯時〜◯時〕
・会場:〔◯◯〕(〔住所・図面は添付のとおり〕)
・想定人数:〔◯◯〕名
・ご依頼範囲:〔会場設営・音響・照明・当日運営〕
・ご提示いただきたい形式:添付の費目構成に沿った内訳つき
■ スケジュール
・ご回答期限:〔◯月◯日(◯)〕
・結果のご連絡:〔◯月◯日(◯)〕までに、採否にかかわらずご連絡します
ご不明点は〔◯月◯日〕までにお知らせください。
いただいたご質問と回答は、条件を揃えるため他社様にも共有いたします。
〔署名〕
最後の「質問と回答を全社に共有する」という一文は、後から条件のズレでもめないための予防線です。1社の質問で前提が変わったのに、その会社だけが正しい条件で見積を出すという事故は、相見積もりで最も起きやすい失敗です。
イベント発注で条件を揃えるチェックリスト
ここが相見積もりの成否を分けます。会場・ケータリング・音響・施工といったイベントの発注は、会社ごとに「どこまでを自社の範囲と考えるか」が違うため、同じ依頼文を送っただけでは比較可能な見積になりません。総額だけ並べても意味がない見積が3通届く、というのがよくある結末です。
依頼前に、次の項目を発注側が決めて明記してください。決めずに送ると、各社が自社の標準で埋めてしまいます。
- 搬入・搬出の時間帯(深夜搬入が必要なら人件費が大きく変わる)
- 養生と原状復帰の範囲(どこまでを見積に含めるか)
- 既存設備を使うか持ち込むか(会場備品の音響を使う前提かどうか)
- 人員の拘束時間(リハーサル・待機時間を含めるか)
- キャンセル規定と変更対応の範囲(何日前まで無償か)
- 予備日・雨天時の対応(屋外なら必須)
- 税・諸経費の扱い(諸経費率を含むか別掲か)
- 数量の前提(人数が増減したときの単価の変わり方)
そのうえで、「一式」で返ってきた見積は必ず割らせます。次の一文を送るだけで、比較可能な粒度まで下りてきます。
お見積ありがとうございます。社内比較のため、「〔◯◯一式〕」の項目につきまして、
含まれる作業・数量・単価の内訳をご教示いただけますでしょうか。
他社様にも同じ粒度でお願いしており、金額の妥当性を判断するためのものです。
費目の構成をこちらから指定してしまうのが最も確実で、無料のイベント見積書テンプレート(Excel・自動計算式入り)を添付し「この構成でご提示ください」と伝えると、届いた時点で比較可能な状態になります。
比較のしかた:金額だけで選ばない
相見積もりで最も避けたいのは、総額の安さだけで選んで当日の品質で後悔することです。比較は次の観点で行います。
- 費目の範囲:同じ範囲を見積もっているか(「別途費用」の多さに注意)
- 数量根拠の透明性:「一式」ばかりの見積は変更時に紛糾しやすい
- 提案内容:課題への理解度、代替案の有無
- 体制:担当者の経験、当日の人員数、トラブル時の対応力
- 金額:上記が同水準のとき、初めて決め手になる
費目を揃えて比較するには、依頼時に無料のイベント見積書テンプレート(Excel・自動計算式入り)を「この構成でお願いします」と指定するのが有効です。費目構造の読み方は見積書テンプレートの選び方と9大費目の構造で解説しています。
断り方のマナーと例文
選ばなかった会社への連絡は、相見積もりのマナーの中で最も差が出るところです。ポイントは「早く・簡潔に・感謝を添えて」。他社の金額や詳細な理由を伝える必要はありません。
件名:お見積の結果について(◯◯イベントの件)
◯◯株式会社
◯◯様
お世話になっております。株式会社◯◯の◯◯です。
先日は◯◯イベントのお見積をご提出いただき、
誠にありがとうございました。
社内で慎重に検討いたしました結果、誠に恐縮ながら、
今回は他社様にお願いすることとなりました。
ご提案いただいた内容は社内でも高く評価しております。
また機会がございましたら、ぜひご相談させてください。
このたびはお時間をいただき、ありがとうございました。
「検討の結果、見送りとなりました」の一文だけよりも、提案への感謝と「また相談したい」の一言があるだけで、次回も快く見積に応じてもらえます。イベント業界は狭く、良い協力会社との関係は資産です。連絡のタイミングは発注先が決まってから数日以内が目安で、遅くとも依頼時に伝えた結果連絡の予定日は必ず守ります。
やってはいけないNG行為チェック
発注側として、次の行為をしていないか確認してください。
- 他社の見積金額を伝えて「これより安くして」と迫っていないか
- 本命が決まっているのに、形式的な当て馬として見積を取らせていないか
- A社の提案アイデアをB社に渡して安く実施させていないか(提案の流用)
- 結果を連絡せず、断る会社を放置していないか
- 会社ごとに条件や渡す情報量を変えて依頼していないか
- 極端に短い期限で精度の高い見積を要求していないか
特に提案アイデアの流用は、信頼を失うだけでなく法的な問題(不正競争や著作権の侵害など)に発展しうる行為です。提案内容はその会社に発注して初めて使えるもの、と考えてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 相見積もりは何社まで取っても失礼になりませんか? 明確なルールはありませんが、2〜3社が実務上の目安です。候補が4社以上ある場合は、まず簡単なヒアリングや概算で2〜3社に絞ってから正式な見積を依頼すると、双方の負担が減ります。
Q. 相見積もりだと伝えたら、断られたり手を抜かれたりしませんか? 通常はありません。法人間の取引で相見積もりは一般的な商慣行であり、伝えたうえで真剣に比較する姿勢はむしろ信頼につながります。隠して進めるほうが、発覚したときの信頼毀損がはるかに大きくなります。
Q. すでに本命の会社が決まっている場合でも、相見積もりを取るべきですか? 社内規定で必須の場合を除き、形だけの相見積もり(当て馬)は避けるべきです。どうしても必要なら、依頼範囲を簡易な概算に留めるなど、相手の作業負担を最小限にする配慮をしましょう。
Q. 断った会社から理由を聞かれたら、どこまで答えるべきですか? 「総合的に判断しました」で十分ですが、可能なら「金額面」「体制面」など大枠だけ伝えると、相手の次回以降の提案改善につながります。他社名や他社の金額は絶対に伝えません。
Q. 相見積もりでトラブルになったら、どこに相談すればよいですか? 発注側・受注側の力関係が絡む問題(不当な値引き要求、提案の無断流用など)は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口が一次的な受け皿になります。イベント発注の現場で多いのは契約前の口頭合意のズレなので、依頼条件と回答期限、結果連絡の予定日をメールなど記録に残る形でやり取りしておくことが最大の予防策です。
Q. 最安値の会社に決めない場合、社内をどう説得すればよいですか? 金額×提案内容の比較表を作り、「安い見積に含まれていない費用(別途費用・撤去費など)」と「体制の差」を可視化するのが定石です。見かけの総額と最終的な支払額は別物であることを示しましょう。